アメリカでの主婦生活を淡々と記録するブログ

アメリカ生活の備忘録。育児の思い出記録が中心です。慣れない環境で頑張って生活していますが、喉元過ぎれば自分でも「何を頑張ってきたか」忘れてしまうので、アメリカで頑張って来たことや悩み事、楽しかった思い出の備忘録として書いています。

コロンビア大学講義メモ(1/5):US Social Services Compared

Coloubia University School of Social workの全5回連続講義中、
第1回「US Social Services Compared」の講義メモです。

 

この講義では、下記の項目を取り扱います。

  • アメリカの政府支出に占める福祉予算の割合
  • 福祉政策はどのような経緯で生まれ、現在どのような領域に整理されているか
  • 思想上のアメリカ社会の特徴:保守vsリベラル
  • これらの結果、OECD諸国比べて福祉の水準が低い

<目次>

1.政府支出に占める福祉予算

連邦政府予算

実は連邦政府予算の2/3は福祉政策関連。

  • 失業手当(Social Security Unemployment & Labor):全体の33%
  • 医療(Medicare&Health):全体の28%
  • 軍事:全体の15%
連邦政府+州政府予算
  • 教育:28%(州政府の半分以上)
  • 福祉:16%
  • 健康:8%

2.福祉政策の起こり

  • 工業化の過程で福祉政策が発生
    • それまでは9割の人々は土地を所有し、地方で家族制農業を行っており、都市には行政など限られた人しか住んでいなかった。
    • 1950年に農民は12%に現使用し、2016年には1.4%となる。
  • 生活環境の変化
    • 賃金労働
    • 都市が過密となり、感染症が流行
    • 高度教育や新しいスキルの習得が必要になる
    • 科学が進展し、健康寿命が延びる(40歳程度→80歳)
  • 教育、健康保険、生活安全、住宅、労働者保護などのニーズが発生

3.福祉政策の領域

★教育
  • もともと先住民が無料の教育を行っていたが、ヨーロッパから移民が来て以降は、寄附性の学校が創設される。
  • 今日のような公教育が都市の子供たちに提供されたのは南北戦争以降(19世紀後半)のこと
  • 下記のような内容を含む。
    • チャイルドケア(新生児、toddler、幼児)
    • 幼児教育(施設型、家庭型)
    • 教育(放課後対策、高等教育、大学、職業訓練特別支援教育
    • 奨学金
  • 学校は営利型/非営利型に分かれるほか、宗教ベースで提供されるものも多い。
★健康
  • アメリカ経済の1/4程度を占める大きな市場を持つ。
  • 下記のように分類できる。
    1. 一般医療
    2. 長期ケア(障害など。人手が必要で高額)
    3. 妊婦・子供のケア
    4. 精神面の健康
    5. 予防医療(水の衛生、建築基準、感染症予防、アルコール規制などの健康習慣管理)
社会保障(Social Insurance)
  • 所得移転の総称。広義では、教育や医療も所得移転と言える(教育は子供への所得移転、医療は病気の人への所得移転)
  • 社会保険
    • 年金(老齢年金、障害者年金)
      • 前近代では、家族が老後資金を備えていたが、近代になり核家族化・賃金労働化が進展し、家族単位での備えが困難になったため誕生。
    • 退役軍人向け年金
    • その他保険(民間保険、失業保険、労災保険
    • 政策優遇(個人貯蓄の税制保護、住宅ローン減税など)
★公的扶助(public Aid)
★住宅支援
  • 建築基準の策定(安全管理)
  • 景観の保持(土地の使用目的の指定)
  • 家の保有の支援(退役軍人の住宅購入支援、公営住宅、家賃補助)
  • Floor(例:建築基準)、Platform(例:自宅購入支援)、Safetynet(例:障碍者への住宅補助)が織り交ざっている
★その他の社会サービス
  • 行政・私立団体・非営利団体等が提供
    • カウンセリング(精神面の健康)
    • 就労支援
    • 子供の安全確保、サマーキャンプなどのコミュニティプログラム
    • 犯罪者更生支援
  • DVや性暴力被害者支援

4.福祉政策の分類

  • Floor:誰もが必要とする福祉

  • Safety Net:貧困の人のみが必要とする支援

  • Platform;ある程度裕福な人が必要とする支援
  • poverty trap:貧困が強まるにつれ補助金が占める割合が増え、貧困から抜け出すことが困難になること。

5.価値観:アメリカの思想上の特徴

  • 保守主義(Conservative)
    • 経済効率性(Economic Efficiency)

      • あらゆる資源を最大限に活用し、非効率を生み出さない

      • 成果:貧困率80%(1900)→20%(2000)

      • パレート最適:市場が最適な状態である場合、その状態を変化させると非効率に陥ってしまう

    • 経済的保守性(Economic Conservative)

      •  規制は非効率を生み、個人の自由を阻害するため、最低限であるべき

      • 独立革命における基本的思想

    • 社会的保守主義(Social Conservative)

      • 神が諭した「暮らし方」を大切にする。家族関係、コミュニティ、血縁を重視。倹約・節制・規律・責任という伝統的価値観を重視。

      • 個人が人生に対する責任を持つことを重視しているため、政府が個人に干渉することを嫌う

      • 伝統的価値観に政府が介入することを嫌う。税などの強制手段より、自発的な事前(Charity)の方がうまくいくと考える

    • アメリカはヨーロッパやカナダと比べても、保守主義が強い

    • 個人と市場の力を信じていることが、Economic/Social保守主義に共通しており、アメリカにおける社会福祉のあり方に重要な役割を果たしている。

  • Liberarism/Social Democrats
    • 経済的公平性(Economic Fairness)

      • Equality(平等性):機会の平等を重視する者が多いが、結果の平等を重視する者もいる。

      • Equity(公平性):裁判や学校など、あらゆる場ですべての人が同じ扱いを受けること

      • Adequacy:衣食住、移動、医療、心のケアなど、生きるために十分な要素が与えられていること。

      • 効率性よりも、必要性と公平性を重視するため、市場への介入に肯定的。時に所得再分配も必要と考えている。

      • 教育・医療・住宅などの分野で、社会から取り残された人の公共投資にも肯定的であり、累進課税にも肯定的。

    • 進歩主義社会民主主義(Progressives Social Democrats)

      • 市場への介入を肯定し、収入の不公平に強い関心

      • 増税へ肯定的。規制や市場介入で不均衡を糾すことを重視。

  • 保守派とリベラルの違いまとめ
    • 富の再分配のための市場介入を必要と考えるかどうか。

    • 全ての人に医療・栄養・住居を与えることで、国全体が豊かになるかどうか。

    • 労働交渉のための労働者の組織化が必要と考えるかどうか。

      • 労働組合、賃金規制、職場安全管理、労働時間規制、衛生規制、環境規制など。

6.国際比較

★貧困
  • 貧困率
    • アメリカ18%、ドイツ10%、フランス8%、イギリス11%、カナダ14.5%
  • 子供の貧困率
    • アメリカ22%、ドイツ・フランス・イギリス12%、カナダ17%
  • ジニ係数(格差を表す指数。大きいほど格差が小さい)
    • アメリカ0.39、ドイツ2.9%、イギリス0.35、カナダ0.33
★教育
  • 初等教育段階のひとりあたり投資額は大きい
    • アメリカ$11,367、ドイツ$8,812、フランス$7,396
  • 高卒未満割合は低く、大卒未満割合が高い
    • 高卒未満:アメリカ10%、ドイツ14%、フランス22%
    • 大卒未満:アメリカ46%、ドイツ28%、フランス35%
  • 幼児教育の段階で、世代間格差が開いている
★健康医療
  • 1人当たり医療費が突出して高い
    • イギリスやカナダは$4,000台だが、アメリカは$12,000台
    • 効果:がん発生率◎、心筋梗塞◎、出生時死亡×、糖尿病××
  • 支出が大きい理由
    • 医者の給料が高い
    • 先進国なので調査研究費用がかかる
    • 医療保険が複雑なので行政コストがかかる
  • ヘルスケア制度は世界23位
    • 無保険13.4%
    • 低体重の赤ちゃんが多い
    • 平均寿命が短い
  • TED"Costs of being uninsured in America"

    • 貧困者向けの医療保険「メディケイド」を使用できるかどうかは州により異なり、現在31州しか参加していない
    • メディケイドに加入した集団の方が医療コストが低い
アメリカは先進国か、後進国か?
  • 公的支援社会保険では後進的であり、集団教育では先進的
  • 世界一の経済大国なのだから、福祉が後進的であっても問題ないのではないか?