スミソニアン博物館のNational Air and Space Museumはとても人気ですが、バージニア州にSteven F. Udvar-Hazy Centerという別館があり、そこに第二次世界大戦で日本に原子爆弾を落としたエノラゲイの実機など、興味深い展示が多数あります。
個人的に、日本から観光に来られた方にお勧めしたい場所の上位です。
第1回を航空機編、第2回を宇宙編として、全2回で記録します。
《目次》
1.航空機関係(戦争編)
★Lockheed SR-71A Blackbird
1960年台のアメリカで使われていた偵察機、愛称はブラックバード。高速で、ロサンゼルスーワシントンD.C.間を67分で飛ぶことができる。ステルス性にも優れており、レーダー上発見しづらい機体なのだそうです。
現在は偵察衛星の技術発展により、1989年に全機退役しています。
その後、湾岸戦争や北朝鮮偵察の用途で再び即対応可能体制に配備されたが、ビル・クリントン大統領が拒否権を用いたため、再発動することはなかったようです。
★夜間戦闘機・月光(Nakajima J1N1 Gekko)
旧日本軍の夜間戦闘機・月光は500機以上制作されたところ、これが現存する最後の1機だそうです。攻撃性を高めるため、3人乗りを2人乗りに改造し、空いた空間に銃を搭載しています。連合国側からの愛称は「IRVING」。
★特攻機・桜花(Kugisho MXY7 Ohka 22)
神風特攻隊が使用し(正確には使用したのは11型で、展示された22型とは動力源が異なるらしい)、約5000人の命が失われたことも書かれています。実際に見ると、その小ささとシンプルさに驚きます。
★迎撃機・震電(Kyushu J7W1 Shinden)
プロペラが後ろについている飛行機・震電は、B-29の迎撃を想定して作成された飛行機のようです。もっとも、この展示では頭部だけなので、肝心のプロペラ部分が欠けているのでわかりにくいです。
B-29といえば、お隣にB-29・エノラゲイが展示されていますが、あまりの規模の違いに「これで迎撃?!どうやって?!?!」という感覚です。
★戦闘機・屠龍(Kawasaki Ki-45 Kai Hei (Mod. C) Type 2 Toryu ”NICK”)
開発開始から実践まで4年以上かかったキ45は、戦闘員の間で評価が高く、地上や船への攻撃に用いられました。こちらも頭部のみの展示でした。こんなに小さな飛行機で敵を攻撃しなければならないなんて、どんなに心細かったろう、と思います。
こちらは製造された1700機のうちラスト1機で「ニック」という愛称がついています。
★水上攻撃機・晴嵐(Aichi M6A1 Seiran)
当時の日本では、潜水艦に飛行機を積んで近寄り、急速に攻撃する作戦を検討していたようです。この晴嵐は、緊急時には機体下部のフロートを捨てて性能を上げるという、珍しい機能を持っていたようです。展示された晴嵐は実戦には用いられず、現存する最後の一機だそうです。
晴嵐の話ではなく、付随して知ったものですが、歴史上唯一、アメリカ本土の攻撃したのは旧日本軍の藤田さんという方なんだそうです。この時の作戦も、潜水艦から発進した航空機を用いたものだそうです。潜水艦で適地に近づいた後、レーダーが取れず敵の情報を検知できないことから、日本軍は潜水艦内に飛行機を積むことにこだわっていたようです。
★戦闘機・橘花(Nakajima Kikka)
こちらは旧日本軍の戦闘機・橘花です。量産を目指しながらも、数十機しか作っていない状態で終戦を迎え、降伏となりました。名前に「花」が付くのは特攻専用機なので、この機体は特攻専用機だったのではないか?という点は議論が分かれます。
桜花のように、性能上も特攻に限定されていれば合点がいくのですが、こちらは戦闘機としても耐えうるエンジンが搭載されており、「実際は戦闘機として開発したかったが、特攻機としてしか開発許可がおりなかった」という事情があったようです。
★B-29 エノラ・ゲイ(Boeing B-29 Superfortress "Enola Gay")
日本の広島に原子爆弾「リトルボーイ」を落とした実機です。操縦していたティベッツ大佐のお母さんの名前が「エノラ・ゲイ・ティベッツ」のため、機体の名前がエノラゲイなんだそうです。
噂通り、説明はかなりアッサリで、原子爆弾の被害に関する説明はありません。このことについては、当初は原爆の被害について踏み込んだ説明を行う計画であったものの、退役軍人や議員などから圧力がかかり、現在の状態に落ち着いたとのことです(出典)。
★エノラ・ゲイがとにかく大きい
2階から見ると、いかにアメリカのB-29が大きいかわかります。B-29を見た時の日本国民の絶望や、こんなに小さな戦闘機で敵襲に挑む日本軍戦闘員の恐怖心が、少しだけイメージできました。
2.航空機関係(航空編)
私個人の関心にあわせて、戦闘機ばかりメモに残しましたが、実際は旅客航空機の展示もたくさんあります。
★音速旅客機・コンコルド(Concorde, Fox Alpha, Air France)
イギリスとフランスの共同開発で誕生したコンコルドは、通常路線の2倍の所要時間で大西洋を横断できたようです。しかし旅客運賃があまりに高額で需要と供給が成り立たず、2003年に運行を停止し、その後機体はスミソニアン博物館に寄贈されたとのことです。
3.展望台
7階の展望台からは、ワシントン・ダレス空港に離発着する飛行機を近くで見ることができます!ひっきりなしに来るので、小さな子供にはとても良いと思います。
続きの「宇宙編」の記事はこちらになります。