アメリカでの主婦生活を淡々と記録するブログ

アメリカ生活の備忘録。育児の思い出記録が中心です。慣れない環境で頑張って生活していますが、喉元過ぎれば自分でも「何を頑張ってきたか」忘れてしまうので、アメリカで頑張って来たことや悩み事、楽しかった思い出の備忘録として書いています。

Smithonian American History Museum② ”American Democracy”の展示を見ました

スミソニアンアメリカ歴史博物館にて、特に好きだった展示について、6つの記録を残しています。

  • ①Many Voices,One Nation 
  • ②American Democracy ←今回はコレ
  • ③The Price of Freedom
  • ④The American Presidency
  • ⑤The First Ladies
  • ⑥The Star-Spangled Banner

<目次>

1.American Democracy

スミソニアンアメリカ歴史博物館で、2階西部の「American Democracy」の展示を見ました。ウェブ上でも解説があるため、こちらを読むと全体の流れが予習できます。

wayback.archive-it.org

2.The Great Leap(大いなる飛躍)

★植民地社会
  • 18世紀のアメリカ植民地では、イギリス国王(君主)と世襲貴族による政治の統治下にありました。1776年、植民地はここから独立し、"The People"(人民)により統治される世界を造ろうと決意します。
  • イギリス本国では成人男性の17%投票権を有していたのに対し、植民地では5~70%の男性が投票権を有していました。これは、植民地では土地の入手が容易であったことから、投票に十分な資産を持つものが多かったことによるものです。

★革命へ

  • 初めはイギリス人であることを誇っていた植民地社会ですが、政策への意見の相違により、少しずつ不満が蓄積します。
  • 特に、本国議会が植民地への課税を決定したときには、不満が大きくなりました。植民地に関することは植民地議会で決定すべきであり、本国議会は課税権を有していないことを主張したのです。(「代表なくして課税なし」
  • イギリス植民地と植民地の対立は深まり、1770年にはボストンでイギリス軍隊が民衆に向かって発砲し、5人の死者がでました(キングストン虐殺)。
  • 1773年にボストンにて、東インド会社の商品であった茶が大量廃棄される事件が起きた(ボストン茶会事件)。これは、植民地への課税が撤廃されたものの、茶だけは課税が残っていたことや、東インド会社が茶貿易を独占したことによる反発から起こったものです。
    • この頃から、アメリカでは意識的に紅茶を飲む文化をやめ、コーヒー文化が広まってゆきます。
★独立宣言
  • そして1776年、トマス・ペインが君主制と貴族政治を批判し、アメリカの独立を主張して著した「コモン・センス」が1年で25回印刷するほど売れました。
  • 1776年7月2日に、各植民地の代表がフィラデルフィアに集結し、トマス・ジェファソンが独立宣言を起草しました。2日かかり、7月4日に調印となりました。

独立宣言。これはコピーで、原本は国立公文書館に展示されています。
★合衆国憲法の制定
  • 独立をしたものの、植民地議会はヨーロッパやアメリカ先住民の脅威に対抗するには、依然として脆弱な体制でした。異なる州がひとつにまとまることは可能なのか?という不安を残しつつも、連邦政府を創設し、権限の一部をそこに移すことを規定する合衆国憲法を策定しました(1778年)。
  • そして不足する人権関連の規定を補うため、1789年にBill of Rightsが規定され、言論の自由や信教の自由等が規定されました。

    憲法制定だけでは不足であることをアピールしている陶器
★偉大なる論争は続く

憲法を制定し、国としての出発を遂げたアメリカでしたが、これは長い議論の始まりにすぎないものでした。

  • 奴隷制は認められるか
    • 自由を掲げて建国されたことと矛盾するが、アメリカは建国当初から奴隷制を採用した経済体制であった。
  • 言論の自由とは
    • 新聞やメディアは、中立的な立場から報道をしているのか?
  • 先住民とどのように付き合うべきか
    • 先住民に対し合衆国憲法は適用されず、時に強制的に違う場所に住み変えさせることもあった。
  • 女性の立場は平等か
    • 1790年代、アメリカ独立戦争フランス革命で活躍した女性たちが、政治へのアクセス権を要求し始めた。
    • 男子と同様の教育を受けるため、全米各地に女子学校が創設された。
  • 特権階級を造らずに「人民による」政治をするために
    • 19世紀になると、労働者は組合を形成し、自らを代表する者を政治に送り込んだ。
    • 人民の政治参加を促す仕組みとして、公立学校で広く教育を行うこととした。

3.A Vote, A Voice(投票と人々の声)

投票権の保障
  • アメリカ合衆国では選挙の仕組みは各州で規定され、合衆国憲法の規定は連邦法に関する選挙と各州に共和制を保証するにとどまっています。
  • 時に憲法の修正や最高裁判決を伴いながら、万人に投票権が与えられることを目指した結果、現在に至っている。
      • 1870:年: 憲法修正第15条

        • 選挙権を含む市民の権利は、人種、肌の色、以前の隷属状態によって否定されないと規定。

      • 1875年: 最高裁判決(マイナー対ハッパーセット事件)

        • 憲法はすべての市民に選挙権を保障していない

      • 1920年憲法修正第19条

        • 市民の選挙権を性別によって否定することはできないと規定

      • 1944: 最高裁判決(スミス対オールライト事件)

      • 1961年: 憲法修正第23条

      • 1964年: 憲法修正第 24 条

        • 連邦選挙での人頭税の使用を禁止。

      • 1965年: 投票権

        • 人種差別によってアフリカ系アメリカ人の投票が妨げられていた指定地域で選挙手続きを変更する前に事前審査を行うことを義務付け

        • 有権者登録のために連邦審査官を南部に派遣する。この法律は1970年、1975年、1982年、2006年に改正される。

      • 1966年: 最高裁判決(ハーパー対ヴァージニア州選挙管理委員会

      • 1971年: 憲法修正第26条

        • 選挙権年齢が21歳から18歳に引き下げられる。

      • 1974年: 最高裁判決(リチャードソン対ラミレス事件)

        • 州は有罪判決を受けた重罪犯に選挙権を与えないことができる

      • 1975年: 投票権法が改正

        • アメリカン・インディアン、アジア系アメリカ人、アラスカ先住民、スペイン系市民の4つの「言語マイノリティ」の保護が盛り込まれる

      • 1990年: 米国障害者法(Americans with Disabilities Act)

        • 障害者が投票所を利用しやすくするための合理的な修正が義務付けられる。

       

憲法修正15条(黒人の投票)
  • 憲法修正13条で奴隷制度が廃止されたその5年後に、修正15条で人種や過去の隷属状態によらず投票権を保証する規定が設けられ、アフリカ系アメリカ人に選挙権が与えられることとなりました。
  • しかし10年もしないうちに、南部エリアでは、脅迫や暴力により、黒人が投票所から締め出されることになります。
憲法修正19条(女性の投票)
  • 女性の参政権獲得については、1878年に初めて法案が提出されて以降40年間低迷し、1920年選挙に間に合わせる形でやっと法案が成立しました。

憲法修正23条(ワシントンDC市民の投票)
  • ワシントンDCは、州でないことを理由に、18世紀以来投票権が認められていませんでした。1961年に憲法23条が改正されたため大統領選挙に投票できることになりましたが、連邦議員選挙に対しては投票権がありません(現在は下院にのみ、投票権のないオブザーバーといいう役職者を送ることが認められています)。
投票権を求めて
  • 1856年の大統領選挙にて、白人男性はほぼ全員が投票できたにも拘わらず、自由身分の黒人男性が投票できた州は6、女性が投票できた州はありませんでした。
  • 第一次世界大戦第二次世界大戦アメリカが民主主義を掲げたことにより、アメリカ国内での黒人や女性、その他のマイノリティの扱いが注目されることとなりました。
  • 1962年にはミシシッピ州でSNNC(Student Nonviolent Coordinating Committee)が「一人一票」運動を開始し、1965年にはアラバマ州セルマ大行進が行われました。
  • その4か月後、ジョンソン大統領が投票権に署名し、黒人の有権者登録をめぐり暴力行為があった南部エリアにも連邦政府の職員が派遣され、無事に有権者登録が進められることになった。
人頭税
  • 1890年代に、アメリカ南部の州で、合法的に黒人の投票を排除するため、投票要件に人頭税が用いられていました。
  • 祖父以前の先祖が南北戦争以前に投票したことがある白人は人頭税の支払いが免除されることがありましたが、黒人に対する免除規定はありませんでした。
★読み書きテスト
  • 教育水準の低い移民や貧困層有権者から排除するために、投票権を得るための読み書きテストが設けられたことがありました。南部の州では、これが黒人を有権者から排除することに有効に機能しました(1965年の投票権法で廃止された)。

読み書きテストの例が展示されていました。

4.Machinery of Democracy(民主主義の道具たち)

選挙キャンペーンに使用された道具や、投票箱などの用具もありました。

★テレビ
  • テレビが浸透し、各家庭に普及する中で、国民の多くが政治討論の場を追体験できるようになりました。

    天井まで多く張り巡らされた画面から、政治討論の様子が其々一斉に流れています


5.Creating Citizens(「アメリカ国民」となる)

  • アメリカは移民の国であることに誇りを持っていますが、新参者を歓迎する気持ちと、国の性質が変わってしまうことへの恐れの間には、常に一定の緊張関係があります。
  • ①Many Voices,One Nationの展示でも、移民国家を「アメリカ化」することへの工夫に関する展示がありましたが、ここでも同じ趣旨の展示がありました。
アメリカ国民は「国家のストーリー」を共有するべきか?

アメリカを擬人化した「アンクル・サム」の衣装。

様々な民族を、家族としてディナーに迎えるアンクル・サムの風刺画。

★国民はどの程度多様でよいものか?

ポーランドからきたユダヤ教徒移民が、祖国文化のメノラー(燭台)と自由の女神を融合させた作品。
  • 1880年から1920年の間に、東欧・南欧からの移民が2000万人以上入国した。これら移民に対し、政府は英語とアメリカ的価値観を教えるプログラムを開発しました。
  • 新たな移民に対する警戒反応として、KKKクー・クラックス・クラン中国人排斥運動など、特定の国民を排斥する動きがみられたこともあります。

白人至上主義を掲げる人種差別集団、KKKの集会。

 

6.(参考)英単語集

sovereignty:主権

monarchy:君主制
hereditary:世襲制
aristocrats:貴族

realm:範囲、領域
Parliament:議会
Common people:庶民
dictatorship:独裁政治
magistrate:判事
artisans:職人
dispute:紛争
grievance:苦情
repeal:廃止
Massacre:虐殺
taverns:居酒屋
intensify:強化する
unalienable:不可侵の
perpetuate:永続する
parchment:羊皮紙
Delegates:代表者
denounced:非難する
good of the whole society:社会全体の利益
untutored:教育を受けていない
descendants:子孫
divisive:対立させる、二分する
apotheosis:神格化
Confederate:南軍
erupt:噴出する
hypocrisy:偽善
erosion:侵食