アメリカでの主婦生活を淡々と記録するブログ

アメリカ生活の備忘録。育児の思い出記録が中心です。慣れない環境で頑張って生活していますが、喉元過ぎれば自分でも「何を頑張ってきたか」忘れてしまうので、アメリカで頑張って来たことや悩み事、楽しかった思い出の備忘録として書いています。

National Portrait Galleryで大統領の肖像画を見てきました

有名人の肖像画が多数展示されているNational Portrait Galleryにて、名物となっている大統領の肖像画展示を見てきました。
併せて、各大統領の人物像に触れながら、肖像画について解説をした"America's President”という本を読みました。

npg.si.edu

<目次>

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⁡1. National Portrait Galleryについて

꙳なぜ大統領の肖像画は独立展示があるのか?꙳

Smithonian American Art Museumの半分ぐらいがNational Portrait Galleryですが、2階部分にPresidentの独立展示があります。

そもそも印刷技術の乏しかった時代では、国民は統治者の姿を見たりイメージすることが難しく、統治者の顔写真をポスター等で配布する技術は19世紀以降急速に発展したとのこと。

アメリカは、統治機構としては三権分立の仕組みをとり、大統領権限も限定的に規定されています。しかし大統領は、ひとりの個人のイメージが機関を代表するものであり、その権限は時に拡大してしまいかねませ。(例えば宣戦布告について議会にかけたのは、1941年のフランクリン・D・ルーズベルトが最後)

大統領というのは単に政治的機関にとどまらず、時にアメリカ社会の世相、美徳(悪徳も!)を代表する独自の地位にいるものと考えるならば、博物館は単に聖人伝に陥ることなくこれを敬意をもって批判し、その重要性を確認し続けることが使命である・・・!という考えで、大統領の肖像画は独自ブースを設けているようです。

大統領の肖像画コーナーの入口。

 

꙳「誰でも大統領になれる!」民主主義の国アメリカ꙳

アメリカでは「大統領は普通のアメリカ人であり、幸運と強い意志のおかげでその地位にたどり着いた」という考え方があるようです。
大統領のイメージは、統治者としての威厳と「普通のアメリカ人の代表」であることのバランスが求められます。

ヨーロッパでは肖像画は完全に政治ツールで、国民に畏怖の念を抱かせるために威厳をもって描かれることが多いようですが、アメリカでより質素で謙虚なスタイルの絵画が好まれるようです。

2.George Washington(初代大統領)

꙳偉大なる初代大統領、ジョージワシントン꙳

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質素で謙虚なアメリカ大統領肖像画、の例外が、初代大統領ジョージ・ワシントンです。
⁡大統領ブースの正面にドン!とあるワシントンが、"Lansdowne"と呼ばれる、有名な1枚だそうです。教科書で見たことあるような…!?!?ホワイトハウスのEast roomに展示されていたのですが、どちらがレプリカなのかは不明です。

  • ⁡ローブではなく黒いスーツを着ている
  • 𓏸テーブルの上には、合衆国憲法連邦政府設立の必要性について示した論文(Federarist papers)
  • 𓏸インク壺はノアの方舟の形ノアの方舟のストーリーは、アメリカ独立戦争の国土奪還のイメージと重なるらしい)
  • 𓏸独立戦争の指揮官だったことを示す
  • 𓏸架空の場所だが、嵐が明けて虹が出て、独立戦争が明けて明るい未来がやってきたことを示す
    ⁡…と、伝統的なヨーロッパ風の肖像画でありながらも、ところどころ功績が散りばめられており、ユニークなんだそうです。

3.Abraham Rincorn(第16代)

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アメリカで人気のある大統領は誰?꙳

英語の先生(アメリカ人)に「アメリカで人気のある歴代大統領は誰ですか?」と聞いたら「ジョージ・ワシントンでしょ!」と即答されましたが、すぐに次点として出たのがリンカーンでした。

꙳"不器用な世代"の後に登場꙳

リンカーン以前の大統領は、ジャクソン大統領以降あまり有名な方がいなくて、"不器用な世代"と言われていました。
資本が南北に分かれてしまっていたこと地域別に有力な政治家が分かれてしまい、お互いに大統領選出馬を激しく蹴落としあい、ベストな人材が出馬できなかったこと等が背景にあるようです。

そして資本の問題に限らず人道的な問題としても、南北問題(奴隷解放問題)が無視できないテーマとなっていました。
このとき合衆国は建国以来最大の危機、つまり南北分裂の危機を迎えていて、その大きなミッションに対峙した大統領として、リンカーンが尊敬されているようです。

꙳写真を使ったイメージ戦略꙳

リンカーンはケンタッキー産まれのイリノイ州議員、地方出身です。イメージ戦略に長けていたとされ、就任後の肖像画は田舎者のイメージを隠し、厳格で頼もしい姿のものが使われました。
また、共和党の政治キャンペーンとして、初めて肖像画ではなく写真を多用しました。特に南北戦争中の写真は多数公表されたようです。写真は絵よりも頻繁に公表できるので、リーダーとして国民と共に戦争に挑む姿を刻々と示すことができて都合が良かったようです。

4.Theodore Roosevelt(第26代)

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⁡꙳帝国主義者のイメージだったが・・・꙳

うろ覚えの世界史の記憶では、セオドア・ルーズベルト(以下TR)は「帝国主義」「棍棒外交」プラス、棍棒をもって走り回っている風刺画・・
でもTRはアメリカでは結構人気がある名物大統領で、ポートレートギャラリーでもたくさん展示がありました。


꙳肉食系すぎて怖い꙳

ポートレートギャラリーでは「最も矛盾に満ちた大統領」として評価に白黒ついていませんでした。

いいところを言えば、ノーベル平和賞を受賞(日露戦争の講和を仲介)反トラスト法の制定国立公園の制定など。
逆に中南米への強硬路線女性やインディアンへの態度は割とはっきりひどい。
人物像としては、元軍人、ハーバード大卒で著作多数のインテリ、ボクシング好き(実は目をガッツリ負傷)、狩猟好き(引退後はアフリカで猛獣狩り。インディアンの有力者と狩り仲間)、子だくさん(子供6人。ホワイトハウスのウエストウィングを増築)とあります。
たしかに一言では評価できないキャラクターではあるが、とにかく肉食系過ぎて怖い。

地元のNYで知事をやっていたことがありますが、あまりにツヨツヨすぎて問題を起こすので、共和党はTRを国政に追い出すべく副大統領にのし上げたところ、前大統領マッキンリーが暗殺されてしまって大統領に昇格したと書いてありました。

꙳「映える」大統領꙳

19世紀後半からメディア露出が増え、TRが大統領に就任する20世紀に入る頃には、大統領は様々な媒体に記録され「勝手に撮られる」時代に突入していたようです。
TR自身が映像映えするルックス(大きい、ひげ、丸眼鏡、ニヤッと笑う)だったこともあり、人気につながったようです。
性格的にいつもソワソワしていたので「大統領は忙しい」のイメージも、このとき一般化したようです。

꙳当時のアメリカの世相꙳

南北戦争後、19世紀後半はいわゆる「金ぴか時代」と言われ、巨大財閥(鉄鋼王カーネギー、石油王ロックフェラーなど)が誕生し、格差が拡大していました。
この巨大資本を支えていたのが東欧やアジアからの移民で、国内では白人が自分たちの権限を維持しようと保守的になり、緊張感のある時代でした。
TRは「このままではアメリカの民主主義が持たない!」と判断し、反トラスト法を制定して改革を行った模様。自らもNYのアッパークラス出身ながら、富裕層をガンガン批判して改革を進めたようです。

国立公文書館にいくと、大統領のメディア露出の例として、ルーズベルトのテレビ映像と音声が展示されています。

5.Franklin Delano Roosevelt(第32代)

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꙳ポリオに罹患、両足の自由を失う꙳

FDRは1921年にポリオに罹り、装具なしでは歩けない身体になりました。公的なイメージ作りにおいては、虚弱さは最小限に隠されており、メディアもこれを悪意を持って指摘することはなかったようです。
当時すでに、大統領は実務的にもイメージ的にも、無能力であることは許されない風潮はあったものの…、この頃はまだメディアに、大統領の公私を区別する感覚があったようです。両足の不自由を隠すため、ポージングがかなり上手かったとのこと。

꙳スピーチの名手꙳

FDRは聴衆の反応に合わせてスピーチの語調を変えたりと、ライブ感のあるスピーチが得意だったようで、話術においてはFDRに匹敵しうるのはイギリスのチャーチルぐらいだったようです。
FDRが国民に直接語りかけるラジオ「炉辺談話(fireside chats)」もその人気の一因だったようです。
炉辺談話はアメリ国立公文書館の2階で聞くことができます。
第二次世界大戦記念碑の太平洋側の壁面では,真珠湾攻撃に関する炉辺談話を聞き入るアメリカ国民の姿が彫られています。

꙳大統領権限の拡大꙳

世界恐慌からの立ち直りのためのニューディール政策違憲であると指摘を受けたことで,FDRは司法改革を行なって、自分に忠実な判事を送り込もうとします…が、議会の承認が得られずこれは実行できませんでした。
また、戦争中であることを理由に4選します。(後に3選禁止は法定されます)
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